中小企業がインコタームズを選ぶときに考えるべきこと
インコタームズ(貿易条件)の選択は、リスクと費用の分担を決める重要な判断です。「とりあえずFOBで」という選択が後から問題になるケースは少なくありません。特に初めて欧州向け輸出を行う中小企業にとって、どの条件を選ぶかは輸送中の事故対応や保険手配にも直結します。
インコタームズとは何を決めるものか
インコタームズは、売主と買主の間でリスクの移転点と費用負担の範囲を定めた国際的なルールです。現在はIncoterms 2020が最新版です。「どこまで売主が費用を負担するか」「どこでリスクが買主に移るか」の2点を明確にするためのものです。
よく誤解されるのは、インコタームズが所有権の移転を決めるものだという点です。所有権の移転は売買契約書の別の条項で定めるものであり、インコタームズとは独立しています。
欧州向け輸出でよく使われる条件
FOB(本船渡し)は、日本の港で本船に積み込んだ時点でリスクが買主に移ります。輸送費と保険は買主負担です。買主側に輸送手配の経験がある場合は使いやすい条件ですが、初めての取引相手には慎重に検討する必要があります。
CIP(輸送費・保険料込み)は、売主が指定地点まで輸送費と保険を手配します。Incoterms 2020からCIPの保険条件がICC(A)に引き上げられたため、カバー範囲が広くなっています。初めての欧州向け輸出では、CIPを選ぶことで輸送中のリスク管理がしやすくなります。
DAP(仕向地持込渡し)は、相手先の指定地点まで売主がリスクと費用を負担します。買主の負担が最も少ない条件のひとつですが、売主側の物流コスト管理が重要になります。
選択時の実務的な判断基準
初めての取引相手との場合は、リスクの移転点が明確なCIPまたはDAPを選ぶことをお勧めします。FOBは買主側の輸送手配能力に依存するため、相手先の物流体制が確認できていない段階では慎重に検討してください。
また、インコタームズの選択は保険手配とセットで考える必要があります。FOBを選んだ場合、本船積み込み後の保険は買主が手配しますが、実際に保険が掛かっているかどうかを確認する手段がないケースもあります。
インコタームズの選択に迷ったときは、相手先の物流体制と自社の保険手配能力を確認した上で判断することをお勧めします。条件の選択が後から変更しにくい場合もあるため、契約書の作成前にご相談ください。